贋作。つまりは偽物である。
が、贋作にまつわる話というのは、なかなかに興味深かったりする。そんなわけで、贋作がテーマの小説や映画、漫画なども多数ある。
雁作も有名になってしまうと、その贋作自体がブランド化してしまうという奇妙な現象も起きる。ドイツの“天才贋作者”ウォルフガング・ベルトラッキ氏も、その1例だろう。
このベルトラッキ氏による贋作と判明した作品2作が、今、ちょっとした話題になっているようだ。
1作目は、徳島県立近代美術館(徳島市)に所蔵されている油彩画『自転車乗り』。フランス人画家ジャン・メッツァンジェ作として、1999年に6720万円で大阪市の画廊から購入されたが、昨年に贋作の疑いがあるとされ、今年3月に贋作であると確定したという。
この贋作は一旦、撤去されたが、「県民への説明のため」として、5月11日から6月15日まで無料で一般公開すると発表された。期間中14回にわたって、学芸員による解説も行われるらしく、なぜ贋作を買ってしまったのか? というパネル展示もするとのこと。美術館が購入元の大阪市の画廊に対して、返金などの交渉中らしいが、この辺は、なかなか難しいのかもしれない。民法上の時効(10年)を過ぎているからだ。
2作目は、高知県立美術館(高知市)に所蔵されている油彩画『少女と白鳥』。こちらは、ドイツ人画家ハインリヒ・カンペンドンク作として、1996年に1800万円で名古屋市の画廊から購入された。やはり、昨年に贋作の疑いが指摘され、今年3月に贋作と確定している。
高知県立美術館の方は9月からの有料企画展で公開する方針という。どうも、贋作をテーマにした企画展らしく、贋作と判断した経緯や国内外で明るみに出た著名な贋作を一緒に紹介し、『美術における真贋とは何か、を考えるきっかけにしたい』という趣旨のようである。
どちらも四国で、公立の美術館。そして、90年代の購入で、贋作と判明した経緯も、ドイツ警察から提供されたベルトラッキ氏の贋作リストが決め手の1つとなっている。
無料公開と有料公開に分かれたことで、高知県が批判されそうな予感がするが、この有料企画展自体は面白そうであるし、3月に贋作と判断した直後に高知県が発表しているので、実は徳島県の方が“後出し”なのだ。
ひょっとしたら、『自転車乗り』も高知県へ貸し出されるかもしれない。
細野不二彦氏をゲストにしたトークショーを追加したら、さらに面白いと思うのは不謹慎だろうか?
先にも書いたが、民法上の時効を過ぎてしまっているため返金される可能性は極めて低い。購入してしまった贋作を少しでも有効活用するには、有料企画展を盛り上げるネタとして使うしかない。そういう意味で、高知県関係者には頑張ってもらいたい。
なお、昨年9月、共同通信がベルトラッキ氏本人に取材をして、少なくとも3作の贋作が日本にあるという証言を得ている。3作目は個人所有とのこと。
個人的には、この個人所有の絵も気になる。
贋作には、贋作なりの価値があるのかもしれない。