日々のあれこれ

日々の暮らしの中で気になったことを書いておきます。

残す? 残さない?

 東京農工大学に保存されていた日本有数の計算機コレクション「西村コンピュータコレクション」が全廃棄の危機に陥っている、というネット記事が出ていた。

 電子計算機の日本史を研究している前山和喜氏がSNSで発信した内容がもとのようで、農工大がコレクション廃棄を決定、同氏に処分を託したという。同氏はコレクションを保存するための支援を募集。300万回以上表示さるなど注目を浴びたという。

 「西村コンピュータコレクション」は、農工大工学部の西村恕彦名誉教授(故人)が中心となって収集したもので、電動式計算機やPCなど重さ10kg程度のものが100台、リレー計算機など重さ100kgを超えるものが30台、手回し計算器が200台、ハードの部品が約3000点、マニュアルなど書籍が1500冊、カタログなどが2000枚含まれる。中には、情報処理学会情報処理技術遺産として認めた「HITAC 10」「TAC ウイリアムス管・真空管および関連資料」「HARP5020関連資料」といった貴重な資料もあるが、完全な整理はできていないという。

 現在コレクションを保管している場所は2年間しか使用できず、このままでは処分される予定らしい。

 大学が保管しているコレクションというと、東京藝術大学の「卒業生の自画像コレクション」とか、武蔵野美術大学の「近代椅子コレクション」とかの芸術系のコレクションだったり、歴史的な文献のコレクションを思い浮かべるが、コンピュータのコレクションというものがあったというのを、今回はじめて知った。そして、ものすごく場所を取りそうなもののようだ。農工大が廃棄を決定した理由も、おそらくスペースの問題が大きいと考えられる。さらに、整理されていないというのも困るのだろう。映像フィルムなどで自然発火の事故が起きた事例もあり、防災の面からも、ただ、積んで置いておけばよいというものではないはずだ。

 非常に貴重なものであるからこそ、残してほしいコレクションだが、きちんと整理して保管することができないのであれば、理想論だけでは語れないのだろう。実際、任された前山氏は、『全て保存するか、廃棄するかの二択』だと考えているそうだ。

 コレクションというのは、収集者個人の価値感に左右されがちでもあり、引き継いでくれるあてが無い場合、散逸してしまうことも多い。個人の情熱だけではどうにもならないし、全てを残すことは無理だろう。

 そういえば、3月に熱海へ旅行した際に見学した旧日向家熱海別邸、起雲閣といった建築物も、保存が決まるまでには、主に費用面での問題を抱えていたという話で、取り壊されてしまう可能性もあったらしい。

 日本には、正倉院御物なんていう究極のコレクションもあったりするわけだが、残すか、残さないかの選択が迫られている遺産は、意外に多いのかもしれない。